中小企業診断士の大場保男です。

私は平成4年から今に至るまで
24年間にわたって、商店街や地域の活性化に取組んできました。

その間に、私が経験したこと、見たり聞いたりしたこと、
教えてもらったり、学んだことを共有することによって

商店街や地域の活性化に少しでもお役に立ちたいという想いから
このブログを配信しています。

鎌倉の小町通り商店街、
真夏の暑い盛りでも多くの人で賑わっています。

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これだけ多くの人が集まる商店街
当然、家賃は高くなり、えっ、そんなに高いの!
と驚くような坪当たりの賃料です。

その影響もあって
小町通りは店の入れ替わりが激しいと言われています。

他の場所よりも売上げがあがっても
家賃負担が高いので、利益が出ずに撤退せざるを得ない
そんな事例が多いというのです。

神奈川県ではありませんが、
これとは逆の話を聞いたことがあります。

商店街内にあったデパートが撤退したため
人通りが少なくなった商店街
そのため、家賃が非常に安くなった。

そのため、資本力があまりない若い商業者が
その商店街に出店するようになり、
面白い通りになったというのです。

鎌倉の小町通りのように
撤退しても次々に新しい店が出店してくるような商店街は例外であり
ほとんどの商店街は、店が撤退すればそこは空店舗になってしまいます。

投資額からスタートしての家賃設定では
テナントは埋まらない。自分たちの街に誰に来て欲しいのか
どんな人に入居して欲しいかのか、街をどう変えるのか
地権者がこんな視点を持つことが大切だ。
昨日はある集まりで、こんな話を聞いてきました。

さて、第6回目のブログである
今回のテーマは「商店街には買いたいものがない!?」です。

「商店街の過去・現在・未来を考える」と題する
流通科学大学の石原武政先生の講演を聞きました。

講演の中で、従来の人集めイベントと違った
タイプのイベントとして次の6つをあげていました。

1. 静岡市の呉服町商店街から始まった「一店逸品運動」
2. 山形県新庄市から始まった「100円(縁)商店街」
3. 岡崎市から始まった「まちゼミ」

4. 函館市から始まり、伊丹を基点に関西に普及している「まちバル」
(神奈川県では「ちょい飲み」と呼んでいます)
5. 千葉県柏市から始まった「まち歩きマップ」
6. 島根県出雲市から始まった「商店街人生ゲーム」

従来のイベントは
商店街に人を集めることはするが
それを個店に入店させるのは、個店の努力であるとしていました。

ところが上記のイベントは
個店に客を呼び込むことを目的に実施しており
これが従来型のイベントと違うと言うのです。
さらに、共通点として次の4つをあげています。

1. 一過性のイベントに終わらせていない。

補助金をもらって大々的にやる一過性のイベントではなく
継続して実施しています。
実施したら必ず反省する機会を設け、
次の実施にフィードバックさせるようにしています。

2. 商店街の全員参加を求めない。

商店街の役員の悩みの種は
会員の足並みがバラバラで
非協力的な会員が多いということです。

しかし、上記6つのイベントは
最初から全員参加を求めていません。
「この指とまれ!」で、やりたい店だけで実施しています。

3. 小さな予算規模で実施している。

いずれも小さな予算規模でできるイベントです。
だから補助金を頼りにしなくても
行政から独立して自主事業として実施することができます。

4. 既存の商店街組織にとらわれずに事業ができる。

商店街以外の外部の人たちを
サポーターとして巻き込んで実施しています。

これからの商店街の事業は
商業者以外の地域の人たちや学生と
一緒に行っていくことがポイントになります。

このように見てみると、従来型のイベントとは
コンセプトそのものが違うように感じます。

さらに、石原先生は、商店街を利用しない理由として
「商店街には買うものがない」という声を良く聞くが
商店街を利用したことがないのに、
なぜ「買うものがない」と分かるのかと皮肉っていました。

「商店街には買うものがない」のではなく
「買いたいものがある」ことを上手く発信できていないだけだ。

その証拠に「まちゼミ」をやれば
参加者の2~3割が再来店して店の客になると言っていました。

「商店街には買うものがない」のではなく
「買いたいものがある」ことを上手に発信していないだけだ。
この言葉に大きく頷いている私でした。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

【発行者】        経済産業大臣登録中小企業診断士
大場 保男
E-mail:yasu-obs@gc4.so-net.ne.jp Tel.090-5521-7427

商店街の店はなぜ入りにくい?


IMG_1470中小企業診断士の大場保男です。

 

私は平成4年から今に至るまで

24年間にわたって、商店街や地域の活性化に取組んできました。

 

その間に、私が経験したこと、見たり聞いたりしたこと、

教えてもらったり、学んだことを共有することによって

 

商店街や地域の活性化に少しでもお役に立ちたいという想いから

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八王子市の八幡町商店街

八王子駅と西八王子の中間地点の

甲州街道沿いにあるこの商店街

 

かつては、ここが八王子の中心商店街だったそうで

現在の店の数は約40店、蔵やレトロな雰囲気の店が散見されます。

神仏具店が4店あり、これも他の商店街とは違う印象を与えています。

古いアーケードが撤去され、

すっきりしたイメージの商店街になりましたが

撤去を巡っては、商店街内部でのコンセンサスづくりが大変だったそうです。

 

“街ゼミ”発祥の地である岡崎から

講師を招いて、商店街単独で2回の“街ゼミ”を実施したほか

逸品づくり運動も行ったということです。

 

周辺の住民は高齢化が進んでおり

高齢化に対応した買物の場づくりが課題となっています。

 

さて、第5回目のブログである

今回のテーマは「商店街の店はなぜ入りにくい?」です。

 

数年前に、地域の消費者7~8人で商店街の店を訪問し

消費者の視点から、その店の良さや改善点について話し合い

それをお店にフィードバックする活動を行ったことがあります。

 

その時に「なぜ商店街の店は入りにくいのか?」

ということがテーマになったことがあります。

 

店の中に入ったら手ぶらで出てこられない!

 

参加者のほぼ全員が同じ理由をあげていました。

「一度店の中に入ったら手ぶらで店を出ることはできない。

何かを買わなければならないから、入りにくい」というのです。

 

スーパーやコンビニならば

店内に入っても買うものがなければ

何も買わずに店を出ても気が引けることはありません。

商店街の店の場合は、そうはいかないから入りにくいと言うのです。

 

そう言われてみれば、私にも体験がありました。

探している商品がなかったので、どうしようかと思っていると

店の人がじっとこちらを見ている、

仕方がないので、欲しかった商品とちょっと違ったものを買ってしまったという体験です。

 

「では、入りやすい店にするにはどうしたらいいですか?」

という質問に対しては、「入りやすさを考えるより

大型店にはない商店街の店としての強みを前面に出した方が良い」

という答えが返ってきました。

 

個店としての強みは何か?

 

彼女たちがあげた様々な強みを整理すると

次の4つの5文字熟語が浮かび上がってきました。

 

第1の強み  自由裁量性

         大型店と違って、店主が接客の中で臨機応変に

         自由裁量ができることができ、“おまけ”や特別な

         サービスなどでお客様に喜んでもらえる点

 

第2の強み  意向受容性

         お客様の要望や“わがまま”を聞いて、

         柔軟に対応でき、かゆいところに手が届く

         小回りが利くサービスを提供できる点

 

第3の強み  独自伸長性

         自店の強みや個性を活かして独自な点を伸ばし、

         それを大きな武器にしていくことができるという点

         大型店は総合的な品揃えが求められるが、個店は独自性で勝負できる。

 

第4の強み  人的交流性

         お客様と店の人とのコミュニケーションを通して

         人的な交流ができる点

         人的な交流やつながりが、店に対する信頼感につながっていく。

 

 

このように並べてみると

いずれも小売りの原点ですね。

やはり、原点回帰が重要だということを再認識しました。

 

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

 

【発行者】        経済産業大臣登録中小企業診断士

                           大場 保男

        E-mail:yasu-obs@gc4.so-net.ne.jp  Tel.090-5521-7427

 

 

 

個店はCAT型ビジネスモデルを目指すべき!


中小企業診断士の大場保男です。

私は平成4年から今に至るまで
24年間にわたって、商店街や地域の活性化に取組んできました。

その間に、私が経験したこと、見たり聞いたりしたこと、
教えてもらったり、学んだことを共有することによって

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最近、「谷根千」という言葉が注目されていますね。
文京区から台東区一帯の谷中・根津・千駄木周辺の地区で
下町風情が漂うこのあたりを散策するのが流行っているようです。

「谷根千」の一つが谷中銀座商店街
レトロな雰囲気が人気の商店街です。

私が行ったときには外国人観光客が多くいました。
その後に行った巣鴨の商店街ではほとんど見掛けず
非常に対照的でした。

酒屋の横にはベンチが置いてあり
酒屋で買ったビールなどを
ベンチに座って昼から飲んでいる人たちがいました。

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熱い日だったので、私も飲みたかったのですが
この後、人と会う予定があったので、グッと我慢しました。

商店街にベンチを置くというこんな
簡単なことで、訪れた人たちの交流を図ることができます。

巣鴨の商店街の個店の店内には
レジ横にイスを置いてある店が多いと聞きます。
高齢者のお客様が多いので、イスに座って茶飲み話をしていくとのことです。

さて、第2回目である今回のブログは
「個店はCAT型ビジネスモデルを目指すべき!」です。

DOG型ビジネスとは?CAT型ビジネスとは?

前回のブログで
商店街がなくなるのは「寂しい」けれど、
買物にはあまり利用しないという人が多いということを書きました。

でも、商店街の個店は買物に利用してもらわないと困りますね。
では、どうしたら個店を利用してもらえるようになるのでしょうか?

「良い値決め 悪い値決め」(田中靖浩著、日本経済新聞出版社)に
DOGビジネスとCATビジネスという話が出ていました。

商店街の個店の生き残りを考えていく上で
ぜひ考えておかなければならない視点なので
その一部をご紹介します。

まずは、DOGです。
  D(デジタル)
     マネやパクリ、コピーが横行する。
  O(オンライン)
     国内外のライバルと安値競争が起こる。
  G(グローバル)
     仕事が安い国に奪われる。
このDOGに噛みつかれると、
マネされた上で、世界を相手に、安値競争をする
消耗戦に巻き込まれるというのです。

つまり、DOGビジネスは無料化に向かうというのです。

これからは、DOGではなく、
CAT(コージー、アナログ、タッチ)を目指すべきと
著者の田中靖浩氏は説いています。

  D(デジタル)からA(アナログ)へ
     コンピュータには作れない魅力(アナログ)を目指す
  O(オンライン)からT(タッチ)へ
     買い手に共感してもらえる触れ合い(タッチ)を目指す
  G(グローバル)からC(コージー)へ
     安さよりも、こじんまりした居心地の良さ(コージー)を目指す

DOGビジネスが無料化に向かうのに対して
CATビジネスは、高い付加価値を付けることができ
それに共感し価値を認める客は
それ相応の料金を支払うというのです。

典型的なアナログ人間である私は
この文章を読んだとき、思わず快哉を叫びました。

オンライン全盛の現在、特にCATのTが重要!

私は、CATの中では
特にT(タッチ)が重要だと考えています。

今では、クリック一つで買物ができ
自宅まで商品を届けてくれます。
しかもペットの墓石まで何でも揃っています。

オンラインによって
本当に便利な世の中になりました。

しかし、アナログの典型例の
朝市をやると、朝早くから大勢の人が集まります。

確かに新鮮で安い商品を
買うことができるという魅力がありますが
朝市には、スーパーの買物では味わえない
触れ合いやコミュニケーションがあるからだと思います。

つまり、T(タッチ)が朝市の大きな魅力になっているのです。

例えば、和倉温泉の高級旅館加賀谷
なぜ、人気があるのでしょうか?

温泉に入り、食事をし、宿泊するなら
安い旅館は沢山あります。

しかし、加賀谷には
“心和む、人穏やか、丁寧!”
と言われるようなT(タッチ)があります。

例えば、ドモホルンリンクルで知られている再春館製薬所
お客様が住んでいる地域が台風に襲われると
「お客様のお宅はいかがでしたか?」と電話を掛けるそうです。

一切売込みなしのお見舞い電話
自分のことを気にかけてくれていたのかと
やっぱり嬉しいですね。

これもT(タッチ)ですね。
チラシ、ニュースレターにもT(タッチ)が必要です。

情報発信にもTの要素を!

私は、情報発信の3つの要素の1つに
パーソナル訴求をあげています。

チラシやニュースレター
ホームページなどで情報発信するとき
発信者の顔写真とともに、
自分の好きなことや趣味のことを載せましょうとお薦めしています。

このことによって
発信者の人柄が伝わります。
これによって、読む人は、より親しみと信頼感を抱きます。

これは、情報発信におけるT(タッチ)だと考えています。

接客、商品紹介、情報発信、アフターサービス
すべての面でT(タッチ)の要素を盛り込めないか
考えていくことが必要だと思います。

「良い値決め 悪い値決め」(田中靖浩著)は
DOGとCATの話だけでなく
値決めの哲学についてなど
きちんと儲けるためのプライシング戦略について書かれています。
一度読まれてみてはいかがでしょうか。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。
【発行者】        経済産業大臣登録中小企業診断士
                      大場 保男
 E-mail:yasu-obs@gc4.so-net.ne.jp   Tel.090-5521-7427

商店街はいま必要なのか?


中小企業診断士の大場保男です。

私は平成4年から今に至るまで
24年間にわたって、商店街や地域の活性化に取組んできました。

その間に、私が経験したこと、見たり聞いたりしたこと、
教えてもらったり、学んだことを共有することによって

商店街や地域の活性化に少しでもお役に立ちたいという想いから
このブログを配信しています。

多くの商店街が衰退していくなか
活気があり元気がある商店街の一つが
川崎市のモトスミブレーメン通り商店街です。

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ドイツのロイドパサージュ商店街と連携し
中世ヨーロッパのロマンと語らいをコンセプトに
様々な活動を展開しています。

ブレーメン方式とも言える
独自のポイントカードを導入しており
ポイント事業の取組みが評価されたことにより
平成28年5月、中小企業庁より「はばたく商店街30選」を受賞しました。

これだけでなく、
一店一エコ運動、防犯ガーディアン、
高齢者施設への出張商店街、秋の祭典「フライマルクト」
商店街の音楽隊など、よくこれだけの活動ができるな
と思われるくらいの多彩な活動を行っています。

商店街活動を牽引しているのが理事長の伊藤博さん
多くの公的役職も兼務していますが
本業のクリーニング店の仕事もしっかりやっています。

場所は東横線の元住吉駅前です。
ちなみにこの駅には急行は止まりません。

さて、今回のテーマは「商店街はいま必要なのか?」です。

商店街は利用していないけど、なくなったら困る!

数年前に、
ある商店街周辺の地域の方々に集まっていただき、
商店街の活性化について意見交換会を行ったことがあります。

「商店街を利用していますか?」という質問に対して
「以前は利用したが、今はほとんど利用していない」
という回答が大半でした。

そこで、「商店街を利用していないのならば
商店街はなくなってもいいのではないですか?」と質問すると

一瞬の間を置いて
ほとんどの方が「商店街がなくなったら困る」と答えたのです。
すぐにではなく、一瞬の間を置いて答えたという点に、微妙なニュアンスを感じました。

「利用していないのなら、
商店街がなくなってもいいのではないですか?」
と質問すると、「なくなったら地域が寂しくなるから困る」というのです。

商店街は利用しないけど
商店街がなくなると地域が寂しくなるから困る。
これが地域の方々の意見でした。

学生も商店街の現状を憂えている?

大学の教授である満薗勇氏が
「商店街はいま必要なのか」という本を書いています。

その中に、学生に対して
商店街について質問した記述があります。

大学の講義で商店街をテーマで話をすると、
学生からのコメントは、さびれゆく商店街の現状を憂うもので溢れかえる。

・小中学校のときよく使っていた商店街が、
 最近できたショッピングモールの影響で、
 コンビニとパチンコ店以外がなくなって残念だった。

・商店街は残ってほしい。あの雰囲気が好きなので。
・個人的に商店街は好きなので、
 盛り上がり直してくれると嬉しい。

このように、商店街がさびれていくことに対しては、
多くの学生から「残念」「悲しい」「さみしい」といった声が寄せられますし、
商店街を「好き」だという学生が数多くいます。

「では商店街で買物をしているか?買物したいと思うか?」と問い掛けると
学生からは、「していない」「したいと思わない」という答えが返ってきます。

商店街周辺の地域方々が
商店街がなくなると街が寂しくなると
感じていることは理解できますが、

商店街を利用しない学生までが
「残念」「悲しい」「さみしい」と
感じている、このことは大きな驚きでした。

なくなるのは困るけど、商店街では買物しない!

学生も地域の方々も、商店街は物を買う場としては利用しないけれど
街路の賑わいの場、交流の場、地域コミュニティの担い手
という面から、商店街の存続を望んでいると言えるでしょう。

しかし、これだけでは経済活動は成り立ちません。

地域コミュニティの担い手としての役割を果たしつつ
経済的にも成り立つ商店街にしていくにはどうしたら良いのか
こんな観点から商店街のあるべき方向を見極めていく

今後、このブログでは
この点について考えていきたいと思います。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。
【発行者】        経済産業大臣登録中小企業診断士
                      大場 保男
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